2008年8月18日月曜日

まちまちコラム第95号

コミュニケーションを促す適正配置について(2008.8.17)

私達は、都市計画やまちづくりの様々な場面において、コミュニティを育みやすくするためのデザインについて考えてきました。集合住宅建替え等の業務に携わってからは、一層具体的にこの課題について取り組む機会が増えています。

ハードなコミュニティ・デザインとしては、まちに関わる多様な人々に快適な居場所を提供し、また互いに顔見知りになり、温かな交流を育んでいくための開かれた空間構成である一方で、防犯性能を強化し、安心安全に過ごせるための環境づくりにも配慮せねばならず、相反するような命題に頭を悩ませているのです。

すでにたいていの人々が顔見知りという小さなコミュニティにおいては、人の目が行き届いていることが犯罪抑止効果につながるという利点もあるのでしょうが、新築集合住宅においてはそのようなことも望めず、最新のセキュリティ機能を導入するしかないな...ということになってしまうわけです。しかし、できる限り大仰なセキュリティ機能導入は避けたいところですね。要所要所に防犯カメラがあるということは、確かに安心感にはつながるのですが、反面常にどこかで誰かに見られているような気がして、気を抜けない状況も心地悪いものです。

そういうことで、コミュニティを育みやすいデザインについて身近に感じた話題を少しいたしましょう。

私が現在勤務している会社はコンサルタントという業種柄、通常はそれぞれが自分のデスクパソコンに向かって黙々と計画書や設計図を作成しています。そのため、えてして自分の殻に閉じこもりがちで、他のスタッフがどんな業務を担当しているのかも知らず、連携すればもっと面白い展開があったかもしれない可能性が埋もれてしまっている状況でした。それを打破するため、2年前にワークスペースの中心部に設置したのが、ユニークな形の交流テーブルセットだったのでした。

一方、恥ずかしながら私は愛煙家で、社内の隅に押し込められている1坪程度の喫煙ルームに行けば、様々な部署の愛煙家仲間と交流できる機会があるわけで、趣味の話題から各自の業務、社としてのあり方に関する話題まで様々取り混ぜて立ち話できるよい環境にあると感じていたので、この交流テーブルは来客対応程度しか使う機会がありません。

本来は、「毎日数分間だけでもよい。スタッフが自主的に集い、コーヒー片手に情報交換してくれれば・・・」との主旨で導入したこのテーブル、なかなか本来の意図に沿った活用がなされていません。個人的な原因分析によると、配置がどうも。あらゆる人の目が行き届いた空間では、息抜きしにくくっていけません。(立ち寄る必然性がなく、行くための勇気がいる空間なのです)

昔から「井戸端会議」とはよく言ったもので、長屋の井戸端はそのコミュニティの裏側にありながら住人には開けた空間であって、水仕事に行ったついでに会話に花が咲いてしまうということが自然とできる環境にあるのです。一般的に会社の給湯室なんてのも、OLさんの交流スペースとしてよく利用されていますね。

ちなみにオフィスにおける喫煙空間は、たいていの場合どんどん隅に追いやられる傾向にあるらしく、都心部のオフィス街などではビルそのものが全館禁煙になってしまう場合もあり、駐車場や公開空地の隅っこに人目を避けるようにスタンド型灰皿が設置され、様々なオフィスで働く人々が肩身狭そうに一服している姿を目にするようになりました。 昨年度、大阪船場のまちづくりワークショップ(船場フォーラム2008)に参加した際には、学生チームからそんな空間に着目したまちづくり提案がなされ、大いに頷けるところがあったものです。

名付けて「PCS(Public Ciger Space:共用喫煙所)」と「POO(Public Outdoor Office:共用屋外オフィス)」というもの。

まちなかの太閤下水跡という船場の古い都市構造を今日に残す空間や公開空地を活用して、ちょっとした共用喫煙所やモバイルを扱える場所を整備することで、整然としたまちなみに風穴をあけ、そこからオフィスワーカーの新たなコミュニティをつくっていこうとする提案です。

オフィスワーカーにとって、自宅とオフィス以外の居場所を持てることができれば幸福なことではないでしょうか。あちこちから自然と人が寄り合い、ちょっと息抜きがてらに周囲を眺めながら、他人と肩ふれあえるほどの密度で接しているうちに顔見知りになり、仕事の情報交換から始まり、「このまちも結構変わりましたね」「しかしこういうところがあかん!」「こうなったらええのにね」なんて会話が進んでいけば、新たなコミュニティやまちづくりの芽が育っていくかもしれません。

学生さん達と行った地元調査でも、「立ち飲み屋」がワーカーのコミュニティを育てる機能を果たしてきたのだということをしばしば聞く機会がありました。

正攻法でいけばもっと整然としたハコモノ系の交流スペースを整備したり、ソフトでは「異業種交流会」を催そう!という事業につながっていくのかもしれませんが、こういうたくまれたということを感じさせない、ある種密かで雑然とした交流の場づくりもこれからのまちづくりには大事なんだろうなと感じた次第です。

文責:chie

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